『日本沈没』
日本沈没。漢字四文字で済む話を、小松左京は上下巻二冊分に引き延ばした。たいしたものである。いつか読めばいいや、という気持ちで今まで読まなかったが、やはりこれは読んでおくべき作品だった。
この作品の凄さは、やはり専門用語のオンパレード、科学的描写の緻密さだ。「フィクションなんだからそんな細かいところを書かなくても」ということでは満足できないのだろう。その緻密さには頭が下がるが、娯楽として「面白いか」は別問題だ。この「もっともらしさ」のおかげで、科学的にはどこまで信用できるか分からない。これがSFであることは間違いない。たとえば、21世紀になっても日本には一万メートル潜れる潜水艇はない。せいぜい6500メートルである。真に教育的なものを書きたければノンフィクションにすればよさそうだが、そういうわけでもないのだろう。この作品のインパクトが今さら感じられないのは、日本の社会にすでに浸透してしまったからなのかもしれない。
ある種の無神経さと視野の狭さ、時代的な限界も感じる。2006年現在では、本作中の各国の反応は、保守系新聞的な陰謀妄想の域を出ない、と感じられる。発表当時は、世論は今よりももっと疑心暗鬼だったのだろう、とも思ったが、一進一退で、結局は今ともそれほど違いがないのかもしれない。
ハリウッドでリメイクされるとしたら、日本沈没を阻止するために隠れたヒーローが立ち上がった、みたいな話になるのだろう。それがいいか悪いかはともかくとして。
人間ドラマ的としては散発的で、「おまけ」でしかない。どいつがどいつなのか、読むうちに混乱してくる。『24』などではミクロとマクロのドラマが見事にかみあっているのだが。
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